大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(う)117号 判決

原判決によれば、原審は論旨摘録の証拠を挙示してその判示第一として被告人は名古屋市熱田区新尾頭町四十五番地において東京都に本社を置く塗料報知新聞社名古屋支局長兼愛知県塗装工業協同組合主事として右新聞社に対しては新聞広告の注文取り広告料の集金右組合に対しては組合員の事務連絡及び特配物資の受け継ぎ等の業務に従事していたものであるがその業務に従事中第一犯罪事実一覧表(別紙添附表参照)の通り昭和二十四年十月十日頃から同二十五年六月二十日頃迄の間に同表集金先欄記載の他人から同表事実中(1)乃至(7)においては前記新聞社え納入する新聞広告料として又同表中(8)(9)(10)の事実においては前記塗装組合員である集金先欄記載の者に対する特配の清酒代金としてそれぞれ同表記載の金員を集金して自己において業務上保管中同表記載の横領日時頃に名古屋市等において同表記載の横領額を擅に生活費等自己の用途に費消する為め夫々着服横領したとの事実を認定したのであるがその認定に係る証拠は丹羽真一郎、稲垣義居、恒川栄吉、高橋五十五の各上申書の外は何れも被告人の自白と被告人作成と認められる証第一号の備忘録ノートブツクであり且つ右各上申書は論旨指摘のように別表の(8)(9)(10)の欄に相当する被告人の自白を補強し得るのみであるそこで同表(1)乃至(7)の欄に相当する事実について右証第一号の備忘録ノートブツクが被告人の自白を補強し得ないとすれば該事実は被告人の自白のみによつてこれを有罪と認定したこととなりその措置は刑事訴訟法第三百十九条第二項に違反するものとなさねばならない而して右証第一号の備忘録ノートブツクはその書面の意義が証拠となる証拠物と考えられ旧刑事訴訟法の時代においては斯様な書類は供述書として取扱われなかつたのであるが新刑事訴訟法においては右と反対の見解が採用せねばならぬものと考えられる蓋しかかる書類(被告人作成たると第三者作成たるとを問わず)が単に証拠物として無制限に証拠となるものとすれば同法の伝聞証拠排斥の原則はこの分野から崩壊するに到る虞があるのであり現に同法第三百二十三条の規定においてもこの種のものが供述書たることを前提とする趣旨が窺い得られるのであるから前示証第一号の備忘録ノートブツクは被告人の作成した供述書と解すべきであり従つて前に述べたように別表(1)乃至(7)は結局被告人の自白のみによつて有罪と認定した違法があることに帰着し且つその違法は判決に影響を及ぼすこと明かである。

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